通訳-「聴く」「話す」とパラドックス

全国通訳案内士試験二次口述「通訳課題」の対策上、最重要なのは「問題文の日本語をよく聴くこと」です。

この点は、私はYouTubeや「二次口述特別動画セミナー」の講義において何度も説明しています。

私は、通訳理論上、原情報を「聴く」ことが重要であることを強調すべく、「日本語の聞き取りさえできれば通訳はできる。英語の勉強は不要である」のように言うこともあります。

たしかに、「原情報の聞き取り」は技術上、通訳の大前提で、最重要です。これができないと「0点」です。

しかし、通訳の「評価」、つまり「この通訳はどのくらい良い通訳か(試験なら「何点与えられるか」)」は、あくまで「話す」の出来で決まります。当たり前ですが、これがプロの世界の厳しいところですね。

通訳を「する」側(プロ、玄人)からいうと、通訳ではエネルギーの70%を「聴く」に注ぎます。だから、頑張って「聞き取った」人は本来、何もしゃべらなくても70点をもらってもいいはずです。

でも、実際にはそのようなことはない。何もしゃべらなければ、残念ながら点は付きません。

これは、通訳を「してもらう」側(アマ、素人)は、結果にしか興味がないし、過程を評価する能力もないからです。

どの分野でもこのように、プロ(技術が高い人)が、アマ(技術が低い人)に評価される、というパラドックスが存在しています。

そして、これが試験となると、さらにもうひとひねり加わります。

つまり、試験委員(評価する人)は、本来、プロです。一方、受験者はプロ志願ではあるものの現在はアマです。

しかし、試験では逆に試験委員は「お客さん」(アマ)を演じます。一方、受験者は「通訳ガイド」(プロ)を演じます(ガイドラインの「通訳案内の業務を模擬的に行う」)。

つまり、互いに現実とは反対の役を演じるのです。ややこしいですね。

この話は、私の著書『逐次通訳七番勝負!』で説明しています。

逐次通訳七番勝負!【改訂版】

 

本試験の通訳課題対策としては、まず「聴く」に注力して「通訳的」な頭を作り、その上で「話す」を整え(文法、発音、語彙など)て仕上げとする。これが学習の正しい順番です。

 

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