通訳案内士とは

通訳案内士は「通訳ガイド」ともいいます。簡単にいうと、外国人観光客に付き添い、外国語を使って観光案内やその他の意思疎通を手伝うプロフェッショナルのことです。
通訳案内士になるためには、通訳案内士試験という国家試験に合格する必要があります。国家資格を設けたのは、通訳案内士が「日本の良さを外国に対して発信する」という、日本の国益にかかわり、民間外交官としての役割を担うものなので、その質を国家が確保するためです。
このことについては「通訳案内士法」に定めてあり、これに反して無資格で通訳案内を行うと、法律により罰せられます(法3条、36条、40条)。

通訳案内士試験とは

通訳案内士の資格を授与するために、毎年1回行われる国家試験です。筆記試験と面接試験があります。国土交通省管轄の日本政府観光局(JNTO)が主催します。

筆記試験は、外国語、歴史、地理、一般常識の4科目があり、面接試験は、外国語によるインタビューとなります。

通訳案内士試験を受験する意義

まず、通訳案内士を行うには、この試験に合格することが法律上の要件なので、通訳案内をすることを希望する人にとっては、受験は必須です。しかし、通訳案内士としての仕事に就くことを希望しない人にとっても、通訳案内士試験を受けることには大きなメリットがあります。

まず、外国語(以下英語とします)を勉強する者にとって、通訳案内士資格は、語学に関する唯一の国家資格であることから、1つの大きな目標であり、英検1級と並ぶステータスがあります。

しかし最大の魅力は、この試験の合格を目指すことにより、日本の良さを再発見し、それを英語で伝えるようになれることです。日本人が英語を学ぶ意義はあくまで「英語のできる『日本人になる』」ということです。アメリカ人やイギリス人になることではありません。すなわち「英語ができる」の部分だけがあり、「日本人になる」という部分がないのであれば、日本人にとって英語を学ぶ意味はないのです。

では「日本人になる」とはどうなることなのか?それは単に日本に生まれて育っただけではダメなのです。国籍が日本であるだけでもダメなのです。日本についての知識と理解が必要なのです。そしてこれらは、意識的に勉強しなければ身につかないのです。

通訳案内士試験では、英語に加えて、日本の歴史、地理、一般常識などについての理解と知識が問われます。ですから、この試験の合格を目指して勉強するということは、英語学習者がときとして怠りがちな、日本に関する知識と理解の獲得を意味します。

そして、学校を卒業して以来、初めてこのような社会科的な分野の勉強をすると、学生時代には感じなかった面白さを発見するものです。するとますます勉強が楽しくなります。こうして、英語学習者の頭には、「英語」という1本目の木に並んで「日本に関する知識と理解」という2本目の木が育ち、これが結びついてくる、という充実感が体験できます。

このように、通訳案内士試験に合格できれば、英語を使って日本を世界に発信できるようになります。すなわち通訳案内士試験合格は、「英語のできる日本人になる」という、英語学習者にとっての原点に立ち戻るための絶好の機会なのです。

通訳案内士の仕事

通訳案内士は、日本に来られる外国人に日本のことをガイドすることが基本になるので、当然ながら旅行関連の仕事が多い。

旅行会社などで務める場合は、通訳案内士の本来の通訳する仕事はもちろんのこと、外国人のお客様の旅に関わる交通手段の案内、時間管理、食事する場所などなど、外国人のお客様の旅を楽しんでもらうためのあらゆることをやらなければならないようなサービス業がほとんどです。人に好かれるタイプの人やサービス業が得意な人にはより向いていることでしょう。