全国通訳案内士試験の出題範囲は、非常に広範です。
これは、受験準備には大量のインプットが必要なことを意味します。特に、二次口述のプレゼン課題についてそういえます。
PEPでは、プレゼン課題につき多数の『モデル・プレゼンテーション』を提供しています。そこで、この点につき「あれを全部覚えなければいけないのですか?」という質問をよくいただきます。
この質問に対する私の答は「イエス&ノー」です。
1.ノーの理由
(1)500本近くある「モデルプレゼン」の丸暗記は、分量的に極めて困難
(2)丸暗記してそれを吐き出す、というやり方はコミュニケーションの学習として本道といえない
(3)単なる丸暗記では、固定的で柔軟な対応力に欠けるので、そもそも合格レベルに達しえない
2.イエスの理由
(1)大量の知識のインプットは必要
(2)人間は、自分で思っているよりも多くのことを暗記できるので、大量インプットに挑戦すべきである
(3)柔軟な対応力・応用力の基礎になるのが暗記した知識である
では、結局どうすればいいのか?
この答が「守破離」なのです。
前回の記事(守破離のプレゼン修行2 2025年8月30日)で述べたように、守破離のポイントはまず「守」の段階にあります。
つまり基本を固める段階(「守」)では、文句(「こんなに覚えられっこないよ」「丸暗記は無意味で愚劣だ」「もっと効率的な方法を教えろ」等)を言わずに愚直にインプットを続ける。
文句を言って「守」の段階で挫折してしまう人は、おそらく過去の成功体験がないか、忘れているのではないか、と私は思います。
昭和世代の熱心な英語学習者には、たいてい「英語スピーチの暗唱」という学習の経験があります。
いわゆる「名スピーチ」と名高い英語のスピーチを丸暗記/リサイトするものですね。
題材としては、キング牧師の「 I Have a Dream」や、ケネディ大統領の就任演説、リンカーン大統領の「ゲティスバーグ演説」などが有名です。
最近ではスティーブ・ジョブズの「Stay Hungry, Stay Foolish」もありますね。
これらのスピーチは15~25分程度の長さがあります(リンカーンは短いですが)。
最初は、こんなにも長い英文を暗唱するなんてできっこない、と誰も思います。そもそも、日本語でもこの長さの文章を覚えるという経験は通常ありませんから。
しかし、実はこれは、数週間から数か月、コツコツとやれば誰にでもできてしまうのです。
スピーチ暗唱の達成は、その後の学習において貴重な成功体験となります。
ちなみに、PEPのオンライン個人レッスンでは「有名スピーチ暗唱コース」もあります。
「守破離」では、このように「守」で挫折しないことが大切ですが、もう1つ大切なのが、「守」の後には「破離」の段階があることを忘れない、ということです。
つまり、丸暗記はスタートに過ぎず、これで終わりではない、ということです。
丸暗記した知識を使いこなす演習を行い、固定化した知識から自らを解き放つ。これがゴールです。
冒頭の「全部覚えなければいけませんか?」に対する答えは、結局
「全部覚えるわけではないし、覚えるだけでは合格レベルに達しない。ただ、覚えるべきことは多いし、実は自分で思っている以上に人には覚える力がある。よって、守破離の原則にのっとり、まずは大量インプットに挑戦するべきである」
となります。
詳しい理論については、「二次口述特別動画セミナー」でお話ししています。
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