全国通訳案内士試験二次口述のプレゼンテーション課題と通訳課題には、受験者が話す時間につき、プレゼンは2分、通訳は1分程度、という時間要件があります。
この点につき、受験者の方からご質問がありましたのでシェアします。
●プレゼンの時間要件(2分)
質問①:
プレゼンテーションは2分ですが、2分以内に話し終えてしまった場合でもストップがかかるまで話し続けたほうが良いのでしょうか。
回答:
1分40秒程度までは話すべきです。プレゼンは、物理的な分量も採点対象になるからです。
あまり早く終わってしまうと試験委員から「まだ時間がありますので、もう少し話してください」と促されることもあります。話を締めくくってしまった後に、これをやられると非常に焦ります。
できるだけ、最初から2分ピッタリに「ご清聴ありがとうございました」と述べて話を締めくくる理想を目指すべきです。
本番では事実上、時計を見ながら話すことはできません(ルール上は、音の出ない腕時計を見ることは許されていますが、実際には時計を見ながら話すのでは本来、話の内容に向けるべき集中力が削がれてしまいます)。
時計を見ずに体の感覚だけで2分の時間をマネージしてプレゼンを行うのは、演習を重ねることによってできるようになります。
PEPのオンライン個人レッスンでは、プレゼンの際、最初は大きくて見やすい専用の2分タイマーを受講者の方の見やすい位置に掲げて演習を行います。
回数が進んでくると、私は「そろそろ時計を外して練習してみましょう」と提案します。
そうすると、何と9割の方が1分55秒あたりで、「ご清聴ありがとうございました」と言って、ピッタリと2分プレゼンを完成されます。
演習を地道に重ねてきたことにより、2分タイマーが体内に見事インストールされたということです。
なお、このタイマーを用いた演習は、きちんと構成されたモデル・プレゼンテーションを教科書に用い、プレゼンの構成を意識しながら行うことをお勧めします。

つまり、タイムマネージメントは単にプレゼンの終わりが2分になっていればよい、というものではなく、話の内容の要素のバランスにも気を配るべきだからです。
この演習の第一歩が、私の提唱する「タイマー音読」なのです。
プレゼン2分感覚習得は「演習量」 2025年11月13日
基本:タイマー音読の深さ 2025年9月14日
慣れてきたら、音読ではなく本番に準じて自分で話を構成し、試験委員の顔を見ながら話す練習をします。そのための上級タイマーもあります。「タイマーが表示されないタイマー」です。
言葉にすると変ですが、要するに本番と同様に、2分間の最初と最後だけが告げられ、その2分間の間は試験委員の顔が表示される、というものです。
お題も「PEPプレゼン演習カード」を使うことで「自分に自分で即興を課す」ことができます。
これで本番に準じた演習を独学で行うことが可能になります。
●通訳の時間要件
質問②:
受験票の記載に、外国語訳は1分程度とありますが、ネットには1分〜1分半という情報もあります。1分で終える練習をしていますが、訳し終わっていた場合でも、試験官の終了の合図まで話さないといけないのでしょうか。
回答:
通訳の時間要件についてはプレゼンと異なり、「下限」はありません。原日本文(問題文)の内容を英語で余すところなく伝えていれば、早く終わる分にはいくら早く終わっても差し支えありません。
無理に同じ内容を重複して話すのは、むしろマイナスになります。
これは、通訳という言語活動の本質から当然に導かれることです。
詳しくは、「二次口述特別動画セミナー」の第3講「通訳①理論」でどうぞ。テキスト付きでお得です。

なお、「1分か、1分半か」の問題については、現場の運営について以下のような経緯があります(受験者の報告に基づく)。
①二次口述試験が現在の形になったのが2013年であり、当初はJNTOの公式見解通り「1分」でほぼすべて運営されていた。
②しかし、年を追うごとになぜか「1分半」であった、という例が増え、しばらくは試験委員により対応がバラバラで「1分」と「1分半」が混在する期間が続いた。
③ここ数年は、ほぼ「1分半」という報告のみになっている。

『2024全国通訳案内士試験二次口述過去問詳解(上)』
上記動画セミナーの指定テキストであり、「時間要件」についての解説も記載されている。
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では、受験者は「1分」と「1分半」のどちらを基準に準備すればいいのか、が問題になりますが、結論として、受験者は「1分」を基準に演習するべきです。
理由は、まずJNTOの公式見解が書面で「1分(程度)」となっているからです。現場の運営で「1分半」まで待つ、というのは、あくまで事実上そうしたことが現在行われている、というだけであって、いつ変更されるかもしれません。
そして次に、もともと本試験問題は「1分」で十分に訳出できる分量にデザインされているからです。
これは、過去問の問題文と解答例を自分で読み上げてみると分かります(問題文と解答・解説は上記『過去問詳解』に掲載されています)。
逆にいうと、「1分では足りない」という受験者は、きちんと(原理的に正しく)「通訳」ができていないのです。
この点についての解説は、上記「二次口述特別動画セミナー」をご覧ください。

