実務質疑「食べられない問題」の解法

全国通訳案内士試験二次口述の「実務質疑」(シチュエーション)課題に頻出の出題ジャンルとして、「食べられない問題」があります。

観光客が旅行中の食事について「私はこれは食べられないのだが」と言われた場合、ガイドとしてどう対応するか、という問題ですね。

解答としては、何か食べられるものを探して提案する(代案提示)ということになります。これをホスピタリティのある態様で、会話の形で表現することが受験者に求められます。

過去問を見ると、以下のような問題が出されています。

1.「ハラル食」(2018)
⇒ラーメンが食べたいイスラム教徒のお客様への対応

2.「生魚が食べられない客」(2019)
⇒寿司屋へ行く予定だが、家族の中に生魚が食べられない人がいる

3.「蕎麦アレルギーの方への対応」(2021)
⇒蕎麦屋へ行く予定だが、一行の中に蕎麦アレルギーの人がいる

4.「すき焼きの生卵が苦手」(2021)
⇒すき焼き屋へ行く予定だが、一行の中に生卵が食べられない人がいる

5.「天婦羅に飽きた」(2022)
⇒寿司・天婦羅といったものに飽きたお客様への対応

  『2020-21過去問詳解ダイジェスト

さて、こうしたケースにおいて、お客様が「食べられない」理由により、ガイド側の対応は変わってくる可能性があります。

たとえば、1の場合は宗教が理由です。この場合、ハラル対応した特別なラーメンを準備するか、それができないのであれば、イスラム教徒の禁忌に該当しない、他の食べ物を勧めるしかありません。

一方、4の場合は、文化的な理由が第一と思われます。つまり、海外では生卵を食べる習慣がなく、食中毒の可能性があるので、これに抵抗がある、ということです。この場合は、日本の卵は生でも安全である旨を説明し、「無理する必要はありませんが、試してみるのも一興ですよ」とお勧めする余地があります。

食べられない理由としては、宗教上の理由、アレルギー等健康上の理由、個人の信条(菜食主義等)、好き嫌い、文化的な理由、等、たくさんあります。そして、その理由により、会話が変化する能性があります。

よって、たとえば2の場合のように、食べられない理由が明示されていないケースの場合には、ガイドは、まずその理由を確認するのが良いと思われます。

ただ、その場合、Why can’t you eat raw fish? と直接的にきくと失礼になってしまいますから、言い方に工夫が必要です。

You are allergic to raw fish, I assume? のように、口調も柔らかく尋ねるとよいと思われます。

これに対し、Yesならば、May I recommend that you try sushi with cooked fish? のように、加熱されたものであれば問題ない旨を確認する、というふうに会話を展開できます。

逆にたとえば、答えが No, I’m a vegetarian. であれば、加熱されたものでも魚は全てダメなので、かっぱ巻きやいなり寿司を勧めることになります。