「イエス・サー」と言うべきか?

全国通訳案内士試験二次口述では、「ホスピタリティ」が問われます。特に、プレゼン、通訳に次ぐ第3の課題「実務質疑」の最大のポイントは「ホスピタリティ」です。これは、『全国通訳案内士試験ガイドライン』の8~9ページから明確に読み取れます。

「ホスピタリティ」はあいまいな概念ですが、ここに言葉遣いが含まれることは確かです。私は、実務質疑の際には、できるだけ丁寧な言葉遣いをすることをお勧めしています。

もちろん、面接である以上、面接官に対しては、常に丁寧な言葉遣いをすべきですが、この「実務質疑」の場合については、やや芝居がかった感じがするくらいの言葉遣いを敢えてするとよいと思います。

その理由は、まさにこの「実務質疑」は「お芝居」だからです。このことは、試験委員のインストラクション「試験委員を観光客と見立てて会話をしてください」に明確に表れています。

実際、試験委員もこの「実務質疑」においては、ノリノリで「観光客」を演じてくれた、という報告がされています。

英語の Yes, sir. や Thank you, ma’am. は、非常に丁寧な言葉遣いです。普段はあまり使うことがありません。また、たしかに使いすぎるとよそよそしい感じがすることもあります。フレンドリーな英会話の先生には、Don’t “sir” me. (そんなに丁寧な言葉を使わなくてもいいよ)とわざわざ言ってくれる人もいます。

しかし、この実務質疑は「お芝居」が明らかに前提になっています。受験者は「通訳ガイドと観光客ごっこ」をさせられるのです。

そうだとすれば、「イエス・サー」に躊躇を感じる必要はないのではないでしょうか。むしろ、こうした非日常的な言葉を使うことにより、気持ち的に「お芝居モード」に入ることができます。

また実際のところ、お芝居だと分かっていても「イエス・サー」と相手から言われて悪い気はしないものです。

ホスピタリティとは、たしかに第一には気持ち(内容)の問題です。しかし、気持ちを表現するのは言葉です。プロを目指すのが通訳ガイド試験であり、プロにとっては「外形」も非常に大切です。

カジュアルな表現とフォーマルな表現を使いこなす。実務質疑は、まさに「究極の上級英会話」です。

参考:全国通訳案内士試験ガイドラインの8~9ページより引用

(2)合否判定
・合否判定に当たっては、試験委員ごとに基準が大きく異なることがないよう、あらかじめ以下を含む評価項目について、具体的な評価基準を設定しておくものとする。
合否判定は、当該合格基準点(原則として7割)に達しているか否かを判定することにより行う。
評価項目
・プレゼンテーション
・コミュニケーション(臨機応変な対応力、会話継続への意欲等)
・文法及び語彙
・発音及び発声
・ホスピタリティ(全国通訳案内士としての適切な受け答え等)