とにかく明るい安村と英語と歌舞伎

以前、BGTにおける「とにかく明るい安村」の活躍ぶりをPEPブログでも取り上げましたね。その後、”ToniKaku”は、準決勝で惜しくも3位となり、決勝まであと一歩で終わった、と思われていました。

ところが、ワイルドカード枠で急遽決勝進出が決まり大復活。優勝はできませんでしたが、会場を大いに盛り上げ、堂々の大活躍でした。

新しい方から、さかのぼって見ていきましょう。

決勝

登場のしかたがカッコいいですね。”I’m back!”

Tonikaku:”Don’t worry.  I’m wearing…” (安村「安心してください。穿いているのは…」)
Audience: “Paaants!”  (大観衆「パーンツ!」)

“wear” は他動詞で、SVO文型を完成するために目的語を必要とする…

こんな日本の学校で学ぶ堅苦しい英文法事項が、英語の本場イギリスで大旋風を引き起こすとは!

この「パーンツ」は、「いよ!日本一!」のような歌舞伎の掛け声、「大向こう」そのものです。

そういえば、裸ポーズを決めるのは、歌舞伎の「見得を切る」と通じますね。

大向こう、見得に限らず、歌舞伎に出てくる黒衣まで出てきたのにも驚きました。

こうした仕掛けは、日本的な要素を入れるために、誰かが考えたのでしょうか?

これは御愛嬌ですが、「ゴッサム・シティ 」(Gotham City)の発音が悪く、通じにくかったようです。

この場合、THの音などは大して重要でなく、問題はCity の方ですね。カタカナ的に「シティ」と言ったので、”shitty”  になってしまった。これは「クソみたいな」という意味の単語として存在する単語なので、聞く側が一瞬「え?」となってしまうのですね。

次に、しばしばダメ出しをするサイモン審査員に当てつけた villain naked pose が、サイモンにウケていました。

villain は「悪役」です。同義語に antagonist という単語もあります。反対語は protagonist です。

今回はヒーローシリーズだったのですが、1つだけ「敵役」を入れたわけですね。

サイモンは、審査委員長です。いわばコンテスタントにとっては、自分の生殺与奪権を握られている怖い存在だともいえます。それを目の前で裸の悪役にしてしまったトニーの度胸もすごい。そして、それを笑っているサイモンの度量も大きいと思います。

そういえば、一番最初のオーディションのときに、サイモンに対してトニーが

“Simon naked pose?” (サイモンの裸ポーズをしようか?)

といった際、サイモンがこれに返しで

“No, no.  Always keep them waiting, Tony.” (いやいや、お楽しみは後に取っておくものだよ、トニー)

と答えていました。今回、これを実現したわけです。

最後の、フレディ・マーキュリーで、付け髭の糊が弱くてくっつかなかったのはアクシデントでしたが、ノリの良さで吹き飛ばしましたね。

審査員、観客と一体となって、まさにコンサート、お祭りのような熱狂ぶりでした。

準決勝

このクリップではカットされていますが、演技後のインタビューで、女性審査員がトニーに次のような質問をしていました。

“I just said to Simon, I want to know the moment where you thought this was like, when you made this up as an act?”

(さっきサイモンとも話していたんだけど、一体いつ、どうやってこの芸を思いついたの?)

英語の act には、芸、出し物、という意味があります。

残念ながら、トニーはこの英語が聞き取れませんでしたが、こう答えています。

“Ah.. Okay”

ここで観衆から笑いが起きています。英語が通じなかったんだな、ということが通じたのですね。

そこで側の司会者が

“No hard questions”

(難しい質問はなしにしましょうよ)

とフォローを入れてくれています。

見事な人間力、コミュニケーション力です。

ただ、今後世界で彼が活躍していくことを考えると、この質問はこれからも問われそうです。

本番でも、審査員との丁丁発止のやり取りが、会場を盛り上げていましたから、ぜひこの質問に対しては、得意のスパっと切れる英語で、答えを準備してもらいたいと思います。

準決勝後インタビュー

決勝進出の2人以内に入れなかった時のインタビューです。

司会者が “Commiserations, Tony” と言っていますね。

Commiserations というのは、Congratulations の反対の意味の言葉です。「今回は残念でしたね」ということです。

オーディション

伝説はここから始まった。

やはり、初めての時が一番、審査員の反応も新鮮です。

オーディションの際の英語については、先の記事をご覧ください。

これらの動画を見て私が感じるのは、創造力とパッションにより人を笑顔にする、という行為が、かの地で非常に高く評価されている、ということです。

I salute to you, Tony!    You’re great!

(トニーに敬礼!素晴らしい!)