観光白書と通訳ガイド試験の関係…結局、何年版から出題されるのか?ガイドラインの紛らわしい文言に注意

前回の記事でお知らせした通り、本年(令和3年、2021年)版の観光白書が、6月15日(火)に、観光庁のホームページで発表されました。

今回は、全国通訳案内士試験の出題範囲としての観光白書についてまとめたいと思います。

まず、観光白書は観光立国推進基本法(平成18 年法律第117 号)第8 条第1 項及び第2 項の規定に基づき、観光の状況及び政府が観光立国の実現に関して講じた施策並びに観光に関して講じようとする施策について、毎年国会に報告しているものです。

年ごとの観光白書は、国土交通省のホームページにまとめてアップされています。

観光白書の内容は、上述の通り「観光の状況」と「政府の観光施策」ですが、前者についてはその版の前の年のデータが掲載され、後者についてはその版の年の4月までのデータが掲載されます(国会に報告されるのが6月半ばゆえ、それまでに入手可能な最新データは4月分まで)。よって、例えば本年版(令和3年版、2021年版)の観光白書には、令和2年(2020年)の観光の状況と、令和3年(2021年)の4月までのデータに基づいた政府の観光施策が掲載されます。

さて、全国通訳案内士試験ガイドラインにおいては、全国通訳案内士試験における観光書の扱いにつき、以下のように謳われています。本年度(2021、令和3年度)のガイドラインP.6-7より引用します。

V.一般常識筆記試験について
(1)試験方法
・試験は、現代の日本の産業、経済、政治及び文化についての主要な事柄(日本と世界との関わりを含む。)のうち、外国人観光旅客の関心の強いものについての基礎的な知識(例えば、試験実施年度の前年度に発行された「観光白書」のうち、外国人観光旅
客の誘客に効果的な主要施策及び旅行者の安全・安心確保に必要となる知識、並びに新聞(一般紙)の1 面等で大きく取り上げられた時事問題等)を問うものとする。

このように、一次筆記試験の一般常識において、観光白書から出題されると読み取れます。実際、同試験の過去問を見ると、観光白書から、毎年出題されています。

ただ、ここで問題が1つあります。それはガイドラインには「試験実施年度の前年度に発行された『観光白書』のうち…」と書かれているにもかかわらず、これまでの出題例を調べると、問われたのはほぼすべて「試験実施年度の前年度の観光に関する統計数字」であることです。前年の統計数字が載っているのは、上述の通り本年度の観光白書ですので、結局、これまで試験で問われた問題は、「前年度に発行された『観光白書』」ではなく、「試験実施年度に発行された『観光白書』から出題されたことになります。つまり、今年の試験で例年通りの出題がされるとしたら、受験者が見ておくべきなのは令和2年版(令和元年、2019年のデータ)ではなく、先日発表された最新の令和3年版(令和2年、2020年のデータ)である、ということになります。

よって、ガイドラインの文言「試験実施年度の前年度に発行された『観光白書』」は、実際の出題状況とはかけ離れたものであり、受験者にとってはミスリーディングなものと言わざるを得ないでしょう(もっともガイドラインには「例えば」と留保が付いているので、誤りであるとまでは言えませんが)。改正が望まれます。