今月下旬、いよいよ最新刊『2024年度 全国通訳案内士試験二次口述過去問詳解(上)』リリース予定です。
ここ数か月、私(杉森)はこの執筆にかかりきりでブログ等の更新頻度が落ちていましたが、とりあえず一段落つきましたので、執筆しながら学んだことなどをここでシェアしたいと思います。
第1回目の今回は、2024年度二次口述時間帯1で出題された実務質疑(シチュエーション)課題を取り上げます。
出題:「購入物に欠陥があり返品したい」
【シチュエーション】
お客さまがフリーマーケットに行って購入した品物に欠陥がありました。お客さまは返品を希望しましたが、売り主は応じてくれません。あなたは通訳案内士として、どのように対応しますか。
【条件】
お客さまは30代の二人組で、日本文化、特にポップカルチャーに興味があります。
この問題は、類型としては「トラブル交渉型」とでもいうべきものです。過去問を見れば分かるように、頻出の問題タイプである、といえます(たとえば、前年度2023年度だけでも、「抹茶は苦いので注文したくない」「うどん店で一人一品を求められた」「山小屋の混雑が嫌で弾丸登山」等、たくさんあります)。
さて、この問題、皆さんなら、どのように答えるでしょうか。
トラブルに対応するにあたり、まず大きな方向性を決める必要があります。
それは、お客さま(買主)と出店者(売主)の利害が対立している中、客観的に見て、どちらに理があるか、ということです。
ガイドはお客さまに寄り添うのが基本ですが、お客さまの要望が理不尽な場合は、その旨を丁寧に説明し、説得し、代案を提示すべきだからです。
本問は、購入した品物に欠陥があったのですから、返品のリクエストには一見、理がありそうです。しかし、本当にそうでしょうか。
実は、この点を判断するには、法的な知識が必要です。この点、この問題は結構、難問だといえます。
ただ、法的知識といっても、それは世の中に実際に存在する、常識的な利益対立調整に立脚しています。フリマで買ったものにキズがあったから金を返せ、という要求を認めることが、本当に妥当でしょうか。
売主側の立場としては、売れた物は売れた物、として確定させる利益があります。物さえ返せばいつでも金を返させることができる、ということでは不安定でたまりません。返品を強要されるには、売主側に落ち度がなければならないはずです。
フリマに出したものにキズがあった、ということが売主の落ち度といえるでしょうか。この点を考えてみましょう。
(つづく)