私家製プレゼンーお国自慢の勧め

全国通訳案内士試験二次口述の3つの課題(プレゼン、通訳、実務質疑)の中で、プレゼン課題は受験者が聞き手を「話で楽しませる」ことが可能で、かつ求められている課題です。

「楽しませる」は、すなわち「おもてなし」(ホスピタリティ)であり、ガイドラインにも明文で謳われています。

では、話で楽しませるためにはどうすればよいか。

いろいろあるのですが、今回は「お国自慢」をお勧めしたいと思います。

つまり、プレゼンの中で自分の地元の名所や名物を挙げて語るのは、試験委員に好印象を与え、結果として合格に結び付きやすい、ということです。

私はプレゼンの個人レッスンの際、お題を受講者の方に与え、それについてとりあえずプレゼンしていただきます。最初は、受講者の方は教科書に書いてある一般的なことを覚え、それを一生懸命に思い出して2分間のプレゼンをされます。

これは「守破離」の「守」の段階として正しいやりかたです。

ただ、こうした場合、話が一般論ばかりで具体例に欠ける場合があります。そんなとき、私は「プレゼンの本体部分では、できるだけ具体例を挙げて説明してください」と注文を付け、同じ題でバージョン2のプレゼンをしていただきます。

その具体例として「お国自慢」を挙げていただくと、そのバージョン2は、非常に良いプレゼンになることが多いのです。

お国自慢を具体例にするというのは、たとえば、お題が「日本の城」であった場合、本体の部分で具体的な城を挙げて説明することになるところ、その際、教科書に載っている有名な城よりも、やや知名度が劣っても、地元の城を選んで挙げて説明する、ということです。

もちろん、教科書にある有名どころについて説明するのが悪いわけではありません。それでも十分に合格しますし、無理に有名なものを除外する必要もありません。

ただ、私がレッスンをしていて感じるのは、地元の名物について語る受講者の方は、本当に楽しそうに見える、ということです。

この「本当の楽しさ」は、まさに試験委員に伝わります。

実際、試験委員の立場に立ってみれば、教科書通りの話よりもオリジナルのプレゼンの方が興味深く感じるのも当然のことです。

教科書にないオリジナルのプレゼンは難度が高すぎる、そこまでしなくても…と思われるかもしれませんが、オリジナルのプレゼンは上の「プレゼンの構造(テンプレ)」を利用することで比較的容易に実現できます。

世には「テンプレを使うなんて、ワンパターンで安直だ」という批判がありますが、それは実は全くの逆です。テンプレを使うからこそ、創造性を発揮できるのです。

「テンプレは、恥ではなく役に立つ」

お国自慢は、毎回無理に行う必要はありませんが、自然にできる場合には大いにお勧めできます。

自慢の事物は、それについての知識もあり、説明もうまくできることが多い。

そして何より「故郷を思う気持」は、言語や文化を超えた普遍的なものであって、外国人観光客の共感を得られます。

これを実現する手段が、テンプレをはじめとする方法論なのです。