前回まで、3回にわたって2024年度全国通訳案内士試験二次口述(時間帯1)の実務質疑課題「購入物に欠陥があり返品したい」の考え方をシェアしました。
今回は、別の時間帯(時間帯2)に出題された類題「炊飯器の購入をキャンセルしたい」を取り上げます。
まず、問題文です。
【シチュエーション】
お客さまは、日本の家電量販店で炊飯器を2台購入しました。しかしその後、1台につき別の店で同じものがより安い価格で売られているのを見つけたため、購入した店に対して返品を希望する旨を伝えました。しかし、店舗側は「炊飯器はお客さまのために取り寄せた商品であり、返品は受けられない。この点については事前に説明もしている」と言って断ってきました。あなたは通訳案内士として、どのように対応しますか。
【条件】
お客さまは東南アジアの団体客、40代の女性で2度目の訪日です。前回の訪日の際、炊飯器を購入し、その品質に満足したため、今回は親戚や友人のために購入したいと考えていました。
さて、この問題は「売買契約の解除」という点で、前の「購入物に欠陥があり返品したい」と共通しています。
両者が異なる点は、前者は特定物(中古品)に欠陥があった、というのがキャンセル希望の理由であるのに対し、後者は「別の店で同じものがより安い価格で売られているのを見つけた」が理由です。
まず、お客さまの要望が理にかなっているか、の判断ですが、これが「否定」であることは、前の問題よりもわかりやすいと思います。
店側は、完全な品物を引き渡しており、何の落ち度もありません。さらに「炊飯器はお客さまのために取り寄せた商品であり、返品は受けられない。この点については事前に説明もしている」と主張しており、これももっともです。
たしかに大手家電店などでは「業界最安、よそより高い品は値引きします」と謳っているものもたくさんありますが、これは店側で決めるポリシーであり、当該店がそのポリシーを採っていなければ、お客さんの方から要求できるものではありません。
また、アマゾンなどでは「もっと安いものが見つかった」という理由で返品を受け付けることがよくあります。しかし、これも上と同様で、店側がそうしたポリシーを取っていることが前提となります。
さて、ガイドの対応方針は「否定」と決まりました。次は、これをどのようにお客さんに伝えるか、これが実務質疑の最大の問題点です。
(つづく)