さて前回で、お客さまへの対応の基本方針が決まりました。あとは、どのようにしてお客さまにこれを伝えるか、が問題となります。
①基本方針は、「お客さまの要望は遺憾ながら否定」ですが、それでも最初は形だけでも「肯定」から入りましょう。
⇒お気持ちはよく分かります。
I see what you mean.
②しかし言うべきことは言います。その際は、理由を添えるとよいでしょう。
⇒ただ、一般的にフリーマーケットでの買い物は「現状渡し」となっており、売り手も買い手も、中古品にはある程度の不具合がある可能性を理解した上で取引をしています。もちろん、売り主が意図的に瑕疵を隠していた場合は話が別ですが、今回の状況では返品は難しいかと思います。
Generally speaking, though, it’s commonly accepted that items bought at flea markets are sold “as is,” and both buyers and sellers understand that secondhand goods may have some flaws. Under the circumstances, I feel that it might be hard to justify a return unless, of course, the seller has deliberately hidden a defect.
③このまま代案提示に行ってもOKですが、もうワンクッション入れることもできます。
⇒ただ、もしどうしても売り主と話し合いたいということであれば、喜んでお手伝いします。
If it’s important to you, though, and you’d really like to go back to speak with the person you bought the item from, I’d be more than happy to help you.
④交渉はあまり生産的でない、ということをそれとなくほのめかしつつ、代案を提示します。
⇒一方で、そこまで時間や手間をかけるほどではないとお考えでしたら、お買い物を続けてみてはいかがでしょうか。
I’d be more than happy to help you. But, if you feel it’s not worth the time and effort, why don’t we continue shopping.
⑤代案はできれば複数提示し、お客さまに選ばせる、という形をとると理想的です。問題文の「条件」にあった「お客さまはポップカルチャーのファン」の情報も活用します。フリーマーケットは「掘り出し物」がある一方でリスクもある。リスクを避けたいのであれば、市民レベルのイベントではなく、プロの店でそれなりの金額で購入する、ということです。
⇒もし、より質の高いアイテム、例えば名作アニメ関連のグッズなどを、リスクを避けながら探したいのであれば、「まんだらけ」のようなお店に行かれるとよろしいかと思います。じっくり考えていただいて、ご希望をお知らせください。
If you’re interested in finding higher quality items, items such as classic anime products, and want to avoid risk, we could try some stores like Mandarake. Please go ahead and take your time deciding, and then let me know what you’d like to do.
このように、最初の方針を決定すれば、その後の伝え方はある程度パターンに則って行えます。
振り返って、最初の方針(お客さまの要望は遺憾ながら否定)を決定する上で、先行した通訳課題の問題文の内容があります。通訳の問題文は以下の通り。
フリーマーケットはフランス発祥といわれており、人々が公園や広場で、不用品や再利用可能な品物をお互いに交換したり、売買したりする、市民レベルのイベントです。現在、フリーマーケットは世界中に広がり、日本でも全国津々浦々で、大小さまざまなフリーマーケットが開催されています。(134字)
このように「不用品や再利用可能な品物をお互いに交換したり、売買したりする、市民レベルのイベント」という部分から、「欠陥があるから返品」を相手に強要することは法的に不可、かつ常識的に無粋、という判断ができるわけです。