「早く」言えない人のための練習法

先日の記事で、通訳では「速く」言う必要はなく「早く」言うのが大切である、と述べました。

これは、通訳の訳出では、話し始めるタイミングは「早く」する(原スピーチが終了したら直ちに話始める)べきですが、話すスピード自体はゆっくりと確実に話すのがよい、ということですね。

では、その「早く」ができない人はどうすればいいのか、というのが今回の問題です。

原スピーチ(日本語の問題文)が終わったらすぐに話始めることができない人は、訳出に先行する日本語の「リスニング」のやり方が間違っていることが大部分です。

ここで、もし「いや、そうではない。自分がすぐに訳出開始できないのは、問題文読み上げ直後は、まだメモを書いたり、書いたメモを判読したりしているからだ」という方は、私の言う「リスニング」の意味を取り違えています。

ここで言う「リスニング」とは、通訳用の特殊な聴き方のことです。詳しくは「二次口述特別動画セミナー」の「通訳理論編」の講義をお聞きください。

通訳用の聴き方とは、要するに原情報を頭に入れる聴き方のことです。これができていない方は、メモに依存することになります。原情報が頭に入っていない、だから訳出開始タイミングが遅れるのですね。

では、この「メモ依存症」を矯正する具体的方法は何でしょうか。いくつか紹介します。


(1)メモを禁止して練習する

原情報を頭だけで覚える練習をします。練習ですから、部分的に情報を忘れてしまっても構いません。また、原情報を覚える(リテンションを鍛える)ことが目的ですから、訳さずに日本語のままの再現(リプロダクション)で行っても構いません。

「自分はいざとなれば、全くメモしなくてもこのぐらい覚えることができるんだ」ということを練習の段階で確認しておくと、本番での自信にもなります。

(2)メモ方法を制限して練習する

ここでは、メモは取ってもOKですが、そのメモにおいて「日本語の文字」を利用することを禁止します。つまり、英語やローマ字でメモを取ったり、あとは記号や絵を描くことで、情報を保持・再現することを目指すのです。


上述の方法で行うと、頭に負荷がかかるのが自分で実感できるはずです。一生懸命に聞かなければできません。そして、一生懸命に聞く、という行為は、非常に疲れるものです。しかし、これが本来、通訳の時にすべき聴き方なのです。

要するに、メモ依存症とは、頭が怠けている状態なのです。必死でメモを取る行為は、頑張っているように見えて、実は「必死で聞いて覚える」よりも安易でラクな方法であり、人間の頭は意識しないとそちらに流れていってしまうものだ、ということですね。

▶PEPニュース

通訳では、演習量がモノを言います。演習しホーダイが高コスパ!「PEP動画ホーダイ」は1日あたり100円。