全国通訳案内士試験最終結果講評

既報のように、昨日、2021年度の全国通訳案内士試験の最終合格発表がありました。

全語学について、年度別受験者数及び合格者数は、観光庁のホームページに掲載されています。

ここでは英語についてデータをまとめ、講評を加えたいと思います。なお、二次口述の出題内容についての講評は、現在、問題再現作業が進行中のため、後日、別途行う予定です。

まず、英語について主要な数字を前年度と比較すると、以下のようになります。カッコ内が前年度の数字です。

●受験者数:2,955人(3,951人)⇒25%減
●一次合格率:19.1%(20.1%)⇒1ポイント減
●二次合格率:43.7%(48.9%)⇒5.2ポイント減
●最終合格者数:251人(410人)⇒39%減
●最終合格率 :8.5%(10.4%)⇒1.9ポイント減

このように、全ての数字がマイナスです。

まず、受験者数の減少ですが、2013年の東京五輪決定以降、順調に増加し、2015~2017年度は約8,000人以上であったのをピークに、2019年度までは5,000人台以上を続けてきた受験者数が、2020年度より3,000人台に減り、2021年度はさらに2,000人台にまで減少しています。この原因は、やはりコロナの影響であると考えられます。

ただし、東京五輪が決まった2013年度以前の受験者数も3,000人程度であったので、「(五輪のない)元に戻っただけ」とも言えます。減った分は、一時的なブームに乗って受験を考えた層であり、受験者の中の「コア」となる層、すなわち真剣に受験をする人々の数は、それほど減っていない、と考えられます。

受験者にとって最も気になるのは、試験の受かりやすさを表す合格率です。今回の最終合格率8.5%は、試験が現行方式への移行(三次試験の廃止)を完了した17年前の2005年度以降で最も厳しい数字です。

東京五輪に向けてガイド増員の必要性から、通訳案内士試験は一時易化し、業務独占廃止がなされるなど、通訳案内士試験の難易度は、政策的に大きく動いてきた、という歴史があります。この歴史を踏まえると、東京五輪が終わった今、政府はこの国家資格の存在意義を高めるべく、試験の難易度を昭和の昔に戻そうと考えているのかもしれません。

そうだとすれば、今後、さらに(合格率5%程度まで)難化する可能性もあります。

しかし、試験が難しくなるということは、それだけ資格の価値が高まる、ということでもあります。また、何よりもこの試験は、勉強すべき内容が興味深く有意義であることが魅力です。

そして、日本に関する知識が重要である等、年齢が高い人が強みを生かせる、という特徴もあります。全国通訳案内士試験は、今、盛んに行われている生涯学習の素材としてピッタリです。

来年度以降の合格を目指される皆さんは、ぜひモチベーションを高く保って、楽しく勉強をお続けいただきたいと思います。